GREATEST JADE~翡翠の瞳に守られて~
私はまんまと引っ掛かった。

同じように苦しみ、自分を理解してくれる人が現れた嬉しさで、律の本心を見抜けなかった。

孤独という先の見えない洞窟の中に、律の『愛してる』という名の光を見てしまったのだ。

それが嘘とも知らず、私は信じて手を伸ばしてしまった。

それどころか、私はそんな律に恋をした。

彼がヴァンパイアでもいいと思うほどに強く。

ここまで考えると胸が苦しくて苦しくて、私は思わず両目をギュッと閉じると歯を食いしばった。

あの日、あの洋食屋さんの前で子猫を抱いて尻餅をついて恥ずかしそうに笑った律は、偽物だったのだ。

泣ける思いなのに、涙がでない。

それはまだ、律に確かめていないからなのか。

……分からない。

律のあの柔らかな笑顔や、私を抱き締めた腕。

「律……」

いくら考えても頭の中の思いがまとまらなくて、私は小さく彼の名を呼んだ。
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