Sweet Hell
「仕事よりも・・・一緒に食事しませんか?」

「え?」

「今度、食事に行きませんか?」

そう言われて私は返答に困ってしまい、
思わず目をパチクリさせた。

「え、あの、その・・・食事って・・・」

「二人で何か美味しいものを食べに行きましょうよ」

「それってプライベートでってことですか?」

「はい」

私は、どうしていいか分からず目を泳がせると
そのまま俯いた。

彼が大きく股を開いた状態で座っているので
彼の足がもう少しで私の足につきそうなのが目に入った。

私は、しどろもどろに「えっと、あの」と言っていると
「冗談ですよ!」と言って彼は笑い出した。

「え!?」

驚いて彼の方を向くと
彼は「冗談ですよ。木下さんをからかってみたくなっただけです」と応えた。

「ちょっと止めてくださいよー。
なーんかおかしいなぁって思ったんですよ。
本郷さんには秋葉さんがいるのに」

「そうですね」と彼が応えるとそのまま押し黙った。

気まずい。

私は立ち上がると「今日は本当に有難うございました」とお礼を言って
そそくさとその場を後にした。

少し仕事は残っていたけどこのまま彼と二人っきりになりたくないと
反射的に思ったためそのまま私は帰った。

そんなこんなでジャスティンと逢う前日に
仕事でトラブルが発生したため、
私はジャスティンのことを少しだけ忘れていた。

「なーんか、今日一日疲れたなぁ」
家に着き開口一番に言うと
そのままベッドの上で横になった。

私は腕を伸ばし、携帯を取ると
彼からメッセージが来てないかを確認した。

”おやすみ、愛しのメープル”

私はそのメッセージに笑みを浮かべながら明日の準備に取り掛かった。
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