好きにならなければ良かったのに
初心な反応を見せる美幸が可愛いと思った幸司は「可愛いな、美幸は」と素直に美幸の耳許でそう言う。
顔を紅潮させる美幸は、まるで女子高生の様に緊張した顔をする。そんな可愛い表情の美幸が愛しいと感じた幸司は「俺も美幸が好きだ」と囁きながら口付ける。
微かに聞こえた幸司の言葉。美幸はあまりにも自分が幸司を好きすぎて幻聴かと思ってしまう。
チュッと軽く触れるだけのキスをされ、少しだけ顔が離れる。唇が触れそうな距離で幸司の瞳が見える。見上げる幸司の瞳はとても優しくて、まるで美幸を包み込んでしまいそうな眼差しだ。
「さっき、なんて?」
ハッキリ聞こえなかった美幸は幸司の口からもう一度聞きたかった。
すると、恥ずかしいのか幸司は頬を赤く染めて少し照れたようになると瞳を美幸から逸らす。けれど、恥じらいながらも幸司の口からは今度はハッキリ聞き取れた。
「俺も美幸が好きだ」
どんなに聞きたかった言葉かと、美幸はこんなに自分がその言葉を欲しがっていたとは思わなく、腰が抜けてその場に座りこんでしまう。
「美幸?」
へたり込んだ美幸の腕を掴んで引き上げようとしても、完全に腰が抜けたのか美幸は座ったままだ。
「大丈夫か?」
「うん、嬉しすぎて」
美幸は満面の笑みを浮かべ幸司を見つめる。その笑顔には薄っすらと涙を浮かべている。「好き」と言う言葉の重みを噛みしめる幸司は、美幸の前に同じ様に座りこみ微笑むその笑顔を両手で包み込む。
「美幸、今までごめんな」
これまでどれ程美幸を苦しめて来たのか、思い知らされた気分だった。何気ない一言だと幸司には「好き」なんて言葉は有り触れて思えたのに、美幸にはそうではなかった。
「俺、美幸を本気で大事にするから」
「うん」
へたり込む美幸の肩を引き寄せ包み込む様に抱きしめる。そして美幸の首筋にキスをすると再びギュっと抱きしめる。幸せに包まれた美幸もまた抱きしめ返す。
「私、頑張るから」
抱きしめた幸司は美幸の頭を撫でては自分の胸にギュっと押し当てる。激しく抱かれるその腕に美幸は少し息苦しさを感じる。けれど、その力強さが余計に幸せにしてくれると、美幸は至福の笑みを浮かべる。