幼馴染はどこまでも俺様過保護
「そんなことダメ!そんな事させられない!」
「蒼海、よく聞け!このまま続けてると蒼海がどうにかなる。今は大人しくして、ほとぼりが覚めた頃、また作るなら作ってフリマにでも出せば良い。アクセサリー作家miu-la-umiでは無く、蒼海として、な?」
「やだ!miu-la-umi、じゃ無きゃ意味がないの!」
「蒼海!!」
「蒼海ちゃん、少し仕事も休んでゆっくりしない?」
おば様から思いがけない提案がされた。
「それは、どういう事でしょう?」
「蒼海ちゃんのお父さんが、体を悪くして入院してるの…手術が必要らしくて…だから」
「私には父親なんていません!」
「蒼海ちゃん、あなたの気持ちも分からなく無いけど、誤解もある様だし、いちどお父さんに会って話をしたらどうかしら?」
「……私の気持ちなんて誰も分かるわけ無い!他人なんだから放っといて!!…」
「蒼海ちゃん、気を悪くしたなら謝るわ、ごめんなさいね?でも、ね?」
「…帰ります」
「蒼海、送って行く」と、言う隼翔の申し出に「ひとりで帰る。まだ、電車もあるから」と断り部屋を出ようとした。
「蒼海ちゃん、こんな時間にひとりでは帰せないよ?何かあってからでは遅いからね!隼翔、送って行きなさい」
おじ様の言葉に何も言えず、頭だけを下げて桜小路家を後にした。
「蒼海、母さんを許してやってくれないか?母さんは蒼海の事が心配で」
「分かってる…おば様に謝っておいて…」
その後は互いに何も喋らず、私はただ窓の外を流れる街明かりを見ていた。
車がアパートの前に着くと、私は隼翔の顔を見ずに「有難う」とお礼だけを言って車を降りた。
アパートの階段を上がり、部屋も前まで来て下を見ると、隼翔は車から下りて見上げていた。私が部屋に入り玄関ドアを閉めると、車のドアが閉まる音がし、そしてエンジン音は遠くに消えて行った。