隣の部屋にフランス人

「何で?」

「知らないの?日本で刺青ある人は温泉とか
プールとか入っちゃダメなの」

「何それ!差別!」

「差別じゃないよ!そういうの、人目にさらしちゃいけないの。
反社会的勢力のあれやこれの問題で」

「はんしゃかい?」

「要は刺青ってやくざの印みたいなもんだからさ…」

「俺、やくざじゃねぇ!俺、侍」

あー、めんどくさいことになってきた。

「ヨーロッパでタトゥーはとても大切で」

「ここ、日本だから。ヨーロッパ論持ち出さないで」

「俺、日本人じゃねぇから、温泉入るんだ」

「だから、だめって。
入りたいなら、借し切りるか、
温泉のお風呂付部屋に泊まんなきゃ」

ものすごくオーバーにがっかりする素振りを見せる王子。

仕方ないでしょ。日本のルールなんだから。

「このこと、お母さんに言っとくから」

「俺の温泉…」

「やれやれ、私が見つけてよかったよ」

「でも、誰も、俺の刺青見ないよ」

わー、今日はなかなか引き下がらないな…

「見なくても、目に入るわ!
そんな背中にどーんと書いてあったら」

「目に入る?無理でしょ」

多分、目に入るの意味わかってないかも。





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