隣の部屋にフランス人

私は、なだれの中から一枚の紙を引っ張り出した。

「……王子」

その紙を見て、私は急に不安になった。

「多分、違うよね…?」

「リリー、見ちゃった…」

その声に驚いて、私はとっさに
その紙を本の間に突っ込んだ。

「ルイ!起きてたの?」

「ごめん、階段の途中で起きた。
でも、寝てることにした」

「ちょー!起きてるなら自分で戻ってよ!
私大変だったんだから」

何よ!寝たふりしてたの?
そりゃ、あんなに引きずって起きないなんて
普通おかしいよね?

「リリー、それ…」

「ルイ、この紙って…」

王子はベッドから出て、私の前に立つと、
私が本に突っ込んだあの紙を
すっと引っ張り出した。

「ごめん、俺、フランスに帰らなきゃ」

「そうなんだ。どのくらいフランスにいるの?」

ちょっと家族に会いに行くんだよね?
一時帰国ってやつ?

「しばらく日本に戻って来ない…」

「え…何言ってんの?
留学は一年でしょ?まだ3か月しか経ってない」

< 98 / 104 >

この作品をシェア

pagetop