再会は、健康診断で。
まあ、この年であれがファーストキスだなんて思ってないのだろう。恥ずかしくてそんなことを口にできるわけがない。
「許してやってくれ、なんて言わないけど、あいつの気持ちは信じてやってよ。ずっとかえちゃんをいじめてたこと、謝りたかったみたいだからさ」
結城さんの旦那さんのその言葉に、話を聞いてくれと必死だった平根の姿が思い浮かぶ。その言葉を拒絶したとにに見せた今にも泣き出しそうな平根の顔を思い出して、胸がズキッと痛んだ。
ひどいことをされたのに、話も聞かないで拒絶してしまったことを少し後悔する。
なんで、こんな気持ちになるんだろう。悪いのは絶対に平根なのに。
初めてしたキスの感触が、切なげに眉を寄せた顔が、泣き出しそうな顔をした平根が頭から離れない。
許せないという気持ちと、拒絶してしまったことを後悔している気持ちでぐちゃぐちゃになりながらも、その日の仕事を高倉さんのフォローもあってなんとか終えた私は、帰ってから他の事業所に行っていた結城さんと弓野さんの前でまた感情が高ぶってしまい号泣してしまった。