all Reset 【完全版】



男でも、器用にLINEの返信をする奴はよくいる。

スタンプとかも使っちゃったりして。


感心はする。


でも、そんな風になりたいとも思わなかったし、俺にはなれそうになかった。


最近のスマホは機能的で便利だと思う。


でも俺の場合、話すこと以外には活用しないで持て余していたりする。


LINEでちまちまメッセージを打つくらいなら話した方が早い。


それが一番の理由だったりする。



「あの、先輩は彼女いるんですか?」



スマホから顔を上げると、巻髪をアップにまとめた連れの子が俺を見ていた。


どうやら話をふられたらしい……。



「ちょっと、いきなりそんなこと訊く? 前田先輩、ごめんなさいね」


例の彼女が慌てた様子でストップをかける。


でも、連れの二人はランランした目でこっちを見ていた。



ってかさぁ……

何で女はこういう話が好きなんだろ?



一気にうんざりした気分が膨れ上がる。


それを聞いて、一体何の意味があるのか。


そんなことを思いながらにこりと微笑む。



「いるけど」



サラッと一言、俺はそう返事をしていた。


そう言った瞬間、その場の空気が止まったような雰囲気が訪れる。


それがまた、俺を嫌な気分にさせる。


面倒臭い。


連れの二人は「そうですよね〜」と口々に言い、へらへらと笑っていた。


良平は平然としている。


唯一驚いたような顔をしたのは、例の彼女だけだった。



「……じゃ、俺行くから」



もう無理だ……限界。



俺は立ち上がり、その場をあとにした。





別に女なんかいない。


それが一番、楽な逃げ方だって俺は知っている。


< 43 / 419 >

この作品をシェア

pagetop