元カレバンドDX
 鳥肌が、ぶわーっと立つのがわかった。

 本当にあたしはこの曲を歌っていいのだろうか。

 やはりあたしは、歌姫募集のオーディションに合格していたとゆうことなのだろうか。メールには、追記で「歌詞もつけていいですよ」と記されていた。

(か、歌詞まで書いていいの……!?!?!)

 喜びが止まらないあたしは、また吐き気がした。

 スピーカーから流れてくる曲は、相変わらず心地が良い。

 あたしは、嬉しさがみなぎる指先で、「ぜひ歌わせてください!歌詞も書かせてもらえるなんて嬉しいです」とすぐに返信をした。

 メールを送信したあと、そのまま何度も北斗から送られてきた音楽データを聴いた。

 繰り返し聴いても飽きることがなく、再生回数は100回を超えた。

 身体の全細胞に、魂の髄の髄にまで聞かせて、高ぶった感情のまま一気に歌詞を書いた。

 曲の雰囲気、メロディが運んでくる言葉、韻とリズム。

 今まで生きてきた中で覚えてきた言葉を、まるでパズルを完成させるかのように組み合わせてゆく。

 その作業は、あたしにとって至福のときだった。

 あたしの書いたこの歌詞が、北斗のメロディをなぞり、さらにあたしの声が乗っかってゆく。

 それは想像するだけで、あたしをゾクゾクさせた。

 そんな快感に思いを馳せながら、歌詞を完成させたとき、夜はとっくに明け、お昼のチャイムが聞こえてきた。

 あたしは、支度もそのままに、慌てて大学に向かうのだった。
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