みんなみたいに上手に生きられない君へ
和也くんの優しくて、おだやかな声。

見えなくても、和也くんが今どんな顔をしているのか、なんとなく分かるよ。

 
教室ではいつも明るくて元気で、グラウンドでも一生懸命にボールを追っていた。

和也くんのこと全部知ってるわけじゃないけど、和也くんはいつだってかっこいい。そして、すごく優しい人だ。

和也くんは、やっぱり私の憧れの人だよ。



「......ありがとう」

「......うん。そういえば、今度みんなで映画かカラオケにでも行きたいね」

「う、うん、行きたいね」

「行こうな。

じゃあそろそろ切るね、急にごめんな。
電話出てくれてありがとう。
また明日学校でね、おやすみ」



映画かカラオケに行こう、だって。
みんなで、だし、社交辞令かもしれないけど。

でも、もし、行けたら、すごく嬉しい。


和也くんのおやすみって言った声がすごく優しくて、なんだかそこら中転げ回りたいくらい落ち着かないし、胸がざわざわする。

だけど、いつもの嫌な感じのざわざわじゃなくて......。
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