みんなみたいに上手に生きられない君へ
「だろうね、あいついいやつだから。
もし俺が女子を好きになれたら、絶対上手くいってたと思う」

「......そっか、なかなか上手くいかないね」



少し悲しそうな顔で笑みを浮かべた渡辺くんにそう返すと、なぜか彼はマジマジと私の顔を見てきた。



「どうしたの?」

「いや、思ってた反応と違うから。
もっと引かれるかと思った」

「そんな、びっくりはしたけど、引かないよ」



そういう人がいることは知ってたけど、実際自分がゲイだと言う人には初めて会ったから、ビックリはしたし、すぐにはピンとこなかった。

だけど、渡辺くんが真剣だということは伝わってきたし、それに......。



「さっき渡辺くん、男しか好きになれない自分を認められなかったって言ってたよね。
私も、そうなの。みんなと違う自分が認められない。
渡辺くんの悩みとはまた違うけど、まわりのみんなと違う自分に悩むのは、私も少しなら......分かるから」



私はゲイじゃないから渡辺くんの悩みとはまた違うし、ほんとにちっぽけな悩みかもしれないし、もしかしたら渡辺くんとは全然違うかもしれない。

だけど、私も「みんなと違う自分」「普通ではない自分」にいつも苦しんでる。  

だからほんとに少しだけかもしれないけど、気持ちはわかる気がするし、バカにしたりする気も全くない。
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