【完】俺のこと、好きでしょ?


「あのさ、」

「すいません、藤くんいますか?」

わたしが呼ぶよりも前に呼ばれた彼の名前。


呼んだのは藤くんを狙っていると噂の女の子だった。


「ごめん、少し作業しててくれる?」

先ほどの藤くんとは打って変わって、意地悪な一面を隠して優しく言った。さっきまで、意地悪な藤くんは嫌だと思っていたのに、急に距離が出来たみたいで悲しくなる。


この最悪な矛盾を嫌だと思う。


「やだ……」

「ん?何か言った?」

「ううん、何も言ってないよ」

思わず声に出た『やだ……』は、一体何に対してのものなんだろう。

1人で作業することに対しての嫌なのか、それとも藤くんがあの子のところに行こうとしてることなのか……。


前者であってほしい。自分の気持ちなのに、分からないから苦しい。


< 40 / 240 >

この作品をシェア

pagetop