【完】俺のこと、好きでしょ?
「あのさ、」
「すいません、藤くんいますか?」
わたしが呼ぶよりも前に呼ばれた彼の名前。
呼んだのは藤くんを狙っていると噂の女の子だった。
「ごめん、少し作業しててくれる?」
先ほどの藤くんとは打って変わって、意地悪な一面を隠して優しく言った。さっきまで、意地悪な藤くんは嫌だと思っていたのに、急に距離が出来たみたいで悲しくなる。
この最悪な矛盾を嫌だと思う。
「やだ……」
「ん?何か言った?」
「ううん、何も言ってないよ」
思わず声に出た『やだ……』は、一体何に対してのものなんだろう。
1人で作業することに対しての嫌なのか、それとも藤くんがあの子のところに行こうとしてることなのか……。
前者であってほしい。自分の気持ちなのに、分からないから苦しい。