最期の時間を君と共に
と、言ったが、こういう時に限ってお釣りが10円ものしかないんだろうなぁ。まぁ、いいや。

「はい、チラシね。ここに欲しいもの全部書いてあるから」

「はーい。行ってきまーす!」

「ありがとう。いってらっしゃーい」

やはり、外に出ると寒い。すっかり冬の温度。冷たい風が私の体温を下げてくる。
自転車で行くべきか、歩きで行くべきか。徒歩10分の距離だ。ぶらぶら歩いていこう。いつもの1歩より、小さな1歩で歩く。
誓、元気にしてるかなあ。笑っているかなあ。
なんて、考えながら。
“ゆずき!”
不意に、名前が呼ばれた気がした。耳に馴染む、聞き慣れた声で。
「え……?」
この声は、誓じゃ……?いや、まさかね。
< 33 / 281 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop