bajo la luz de la luna
 身支度をして食堂に向かい、ナタリーが運んできてくれたクレーマ(パイ生地に、マルサラ酒へ漬け込んだスポンジとクリームをサンドしたもの)を二切れと、グレープフルーツジュースをおいしく頂く。群は一体、何に付き合えというのだろう。

 任務が休みの部下数人とエンゾさんを連れてきた彼は、黒い長袖Tシャツにモノクロの空の写真が斜めにプリントされた白い半袖Tシャツを重ね、ダボッとしたブラックデニムを穿いている。スーツ以外の格好を見るのは初めてなので、つい目を凝らしてしまった。



「何だ、珍しいか?」

「ええ、とてもね。」



 答えながら、彼もアタシを見ているのだと認識する。薄手の紺色のVネックセーターに小ぶりのダイヤのネックレスを合わせ、ベージュの膝上スカートの下は黒いストッキングで寒さ対策。今朝早くこちらへ到着したソニアとグレイが届けてくれた、小さめのボストンバックから選んだものだ。



『ボスはシンプルな格好が似合うわねぇ。たまには花柄のワンピースなんかも着てちょうだいよ!』



 群に同意を得ようとしているソニアの一言に、『気が向いたらね』と返す。我が婚約者は、真意の読めない微笑を浮かべていた。
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