bajo la luz de la luna

―deseo disimulado

 ドアの向こうに消えた二人だが、まだ“そこ”に居る。口を挟むなと言われたし、寝てしまおうと思って目を閉じたのだけど。会話が聞こえ始めたから、耳を澄ませてしまう。



『……さっきは悪かったな、つい苛ついちまって。』

『……いえ、わたくしも無礼な口を利いてすみませんでした。』



 すぐに和解したようなので、胸を撫で下ろした。少しの沈黙があって、再び群から話し出す。



『……お前、もう観念したらどうだ?』

『何のことです?』

『とぼけんな。俺と同じ目で未来を見てるクセに……だから苛つくんだよ。』



 ――今何か、おかしな言葉が聞こえやしなかったか。思わずドアの向こうに出ていきそうになり、群の言葉を思い出してその場に留まる。



『……言っている意味が、分かりませんね。』

『分からねぇなら何度でも言ってやるよ。テメェが未来に惚れてることはお見通しだ。悪いが俺は、自分のものをそういう目で見られると我慢ならねぇタチなんでな。今すぐお前を殴りてぇくらいだ。』



 殺気がひしひしと伝わってくる。言葉通り、群は腹が立っているのだろう。その怒りで、屋敷中の窓ガラスが割れてもおかしくないくらいだ。
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