bajo la luz de la luna

―la residencia de ROSA

「……なぁ未来。“撃つな”ってのはどういうことだ?」



 慎ましやかにしているマヌエルを後ろに連れて廊下を歩いていく最中、群が尋ねてきた。アタシは先程虫けら達に発砲したし、これまでにも何度も銃を使用している。群が首を傾げたのは、代々ローサファミリーに伝わる掟を知らないからだ。“撃つな”という言葉に隠された、真の意味を。



「“殺すな”、ということよ。銃を使おうがナイフを使おうが、決して息の根を止めてはならないという意味。」

「成程な……言われてみれば、ローサが関わる戦いでは圧倒的に死者が少ないな。“ぬるい”と言う奴らも居るが、俺は好きだぜ、その心意気。」



 とどめを刺すのに抵抗がねぇファミリーのボスが言うことじゃねぇけどな、と苦笑する群。チェーロは代々その鮮やかな戦闘スタイルで名高いから、ウチとは全く異なるというのは事実だ。でも、アタシはちゃんと知っている。彼が優しさを捨てきれない、温かい人間なのだということを。



『お嬢様、皆があなたのご帰宅を待ちかねていたようですぞ。』



 背後からの穏やかなスペイン語。目の前にズラリ並んだ使用人達を見て、群が隣でクスリと笑んだ。
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