魔法使い、拾います!
グレンの胸の鼓動が早鐘を打っていて、緊張が伝わってくる。確かにグレンには浮いた噂は皆無であった。人気者のグレンに言い寄る女性もいたはずなのに、はぐらかしてばかりでおかしいなとは思っていた。

それがまさか、こんな理由だったとは。想像もしていなかった。

「グレン……あの……私……。」

突然の鬼気迫るプロポーズに戸惑うばかりで、リュイは何と言っていいか考えがまとまらない。とりあえずリュイに出来たことと言えば、グレンを突き飛ばして逃げるという、最低な行為くらいであった。

どのくらい走ったのだろう、自宅がかなり上の方に見えている。どうやら町外れの林まで来ていたようだ。グレンは気を遣ってくれたのか、追っては来なかった。

リュイは正直少しほっとした。今グレンと向き合ったとしても、きっと傷つける言葉をぶつけてしまうだろう。どう考えても今はまだ幼馴染のお兄ちゃん以外に思えないのだ。

しかしグレンの言葉はもっともで、ヴァルはこれから婚約者のために王宮へのりこもうとしている。そんな相手を想ったところで未来はない。

そもそも彼は東の守護長を命ぜられているほどの上級魔法使いである。最初から釣り合うはずのない相手だ。そんなの分かっていたことではないか。

「こんな状況の時にプロポーズするなんて、グレンのばか。」

例えお兄ちゃんとしか思えなかったとしても、ずっと自分を支えてくれたグレンの申し出に甘えたくなってしまうではないか。そんな卑怯でズルい考えが浮かんできてしまう。

「こんな風に思っちゃいけない。グレンの気持ちを利用しちゃだめだ。」

リュイは自分勝手で浅ましい自分を情けなく思った。
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