うちの後輩ナマカワです。


「仕事は慣れましたか?」

「うん。鞠ちゃんとレンさんのファイルのお陰でなんとか」

「ファイル?」

「そう。あ、ちょっと待ってて」

そう言って私は一度店の中に入り、レジカウンターの下にある戸棚を開いて何冊かあるファイルのうち一冊を取り出すと鞠ちゃんの元へ戻った

「鞠ちゃんはい、これ。」

「ありがとうございます」

鞠ちゃんは徐にファイルをパラパラとめくり、中の内容を確認し始める

私が鞠ちゃんに渡したのはレンさん手書きの店長ハウツー本。

最初こそ何も知らされないままぽーんっと放り出され、経営なんてど素人の私に本当に出来るのかと途方に暮れていたが、レンさんが残してくれていたファイルが現在進行形で役に立っている。

いつも使っている業者さんの一覧、食材の価格がこれより高い場合は他の業者に変えるだとか、いつも来てくれているお客様の名前や容姿、買ってくれているケーキやパンの種類…エトセトラ…

それはまるで

「このお店、どうやら随分前から…恐らくこのお店を建てた当初から凛々さんに任せるつもりだったようですね」

「んー、問題はそこなんだよねぇ…」

レンさんは何故か最初から私にこの店を任せるつもりだったようで

ファイルには私の名前が度々出てきており、私のために作りましたと言わんばかりで、不思議でならなかった


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