ハルとオオカミ


「……クールだね~、五十嵐」

「つーか普通に怖い。さっきマジで喧嘩始まると思ったし」

「助かったけどさ……やっぱ苦手かも。はるちゃんすごいね。友達なの?」

「えっ?」


さっきの『河名さん』を脳内で繰り返し再生していた私は、尋ねられて現実に引き戻された。反応が少し遅れる。

そんな私を、アキちゃんだけはちょっと呆れた目で見ていた。


「あ、友達っていうか……去年同じクラスだったから。たまに話すんだ」

「へ~。すごいね。だってあれでしょ? 五十嵐って、東中出身でしょ? さっきの浦波(うらなみ)高校に行った人が多いっていう……」

「えっ、そうなの? どうりであんなチャラいんだね。遊んでるって噂だし……」


こわーい、と女子たちが言い合うのを、私は苦笑いをして聞いていた。


東中っていうのは、このあたりにある中学校で、素行が悪い生徒が多いと言われている学校だ。

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