ハルとオオカミ
「……オイ、はる?」
「ハッ」
「また意識飛んでただろ……。ごめん、仕事の邪魔になりそーだったらいいよ」
「う、ううん!大丈夫! てゆーか、課題また溜めてたの?」
「溜めてない……けど、テスト前だからっつって数学の山口が俺にだけ課題出してきたんだよ。『お前ほっといたら勉強しないだろ』って」
「わあ……。大変だね」
「めんどくせー……。まあ、勉強しないのはホントだけど」
でもその課題って、つまりは五十嵐くんが自主的に勉強するように出されたものってことだよね。サボったって別に成績には影響しないワケで……。
めんどくさいって言いながら、ちゃんとやろうとしてるんだから課題を出した効果はあったのでは。山口先生ナイスです。
きっと去年の五十嵐くんならやらなかっただろうに。このひとも少しずつ変わっていってるんだなあ。
「だから、課題でわかんないとこがあったら教えてほしい」
「うん。テスト勉強だもんね。私で良ければいくらでも教えるよ」
五十嵐くんが『変わっていってる』ことが、なんだか不思議に思えた。