王太子殿下は囚われ姫を愛したくてたまらない


「こういうキスは好き?」
「ん……はい」
「そっか」

何度も触れるだけのキスをされ、身を任せる。
ふわふわとくすぐったいようにも感じ、ふっと笑うと、シド王子も笑ったのが気配でわかった。

「ちょっとだけ……ごめん」

キスしながら言われた言葉に目を開けると、強い眼差しがそこにあって……そのまま、触れるだけではない、さっきみたいなキスをされる。

「……んっ」

触れ合う舌の感覚に戸惑い必死に耐えていると、「ごめん……。我慢できなくなった」とシド王子が離れる。

はぁ……と落とされた吐息も、シド王子が浮かべる悩ましげな表情も、雰囲気も。
そのどれもが色っぽくて……胸がトクンと鳴り、熱を身体中に送ったみたいだった。

「クレアは、こういうキスが嫌い?」

ゆっくりと聞いてくる声まで艶を含んで聞こえるから、恥ずかしくなって目を伏せる。

「嫌いとかじゃなくて……わけがわからなくなるから……」

こういうキスをされると頭がぼーっとしてきて身体が熱くなる。
それは嫌じゃないけど、経験のない私には怖い。なんだか溶け出しちゃいそうになるから。

そう説明すると、シド王子はふっと嬉しそうに表情を緩ませ私の頬を撫でた。

「大丈夫。クレアがわからなくなっても、俺がちゃんと傍にいるから」

柔らかい微笑みで言われた言葉に……ハッとする。

いつだってそうだった。ここにきてから、ずっと……。
わからなくなったとき、傍で手を握って安心させてくれたのはシド王子だった。

私の不安に一番に気付いて、それを取り除いてくれたのは……シド王子だった。

いつもいつも、守られていた。

「そうですね」と呟くように言ってから、顔を上げ、シド王子に笑みを浮かべる。

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