王太子殿下は囚われ姫を愛したくてたまらない
「シド王子が傍にいてくれたら、なにも怖くないかもしれません」
笑顔を浮かべた私に、シド王子はぽかんとした顔をしたあと、それをいたずらな笑みに変えた。
「クレアが許してくれるならあのキスの先まで進みたいって思ってる男に、そんなこと言っていいの?」
「こんな私を望んでくれるなら……私もその気持ちに応えたいです」
即答だったからか、シド王子は驚いたような顔をしたあと、訝しげに「それ、本気でとるけどいいの?」ともう一度確認する。
だから「嘘でこんなこと言いません」と答えると、すぐに肩を押されそのままベッドに押し倒された。
ぐるんと回った視界が定まり、上から見下ろすシド王子に気付く。
私の顔の横にそれぞれ手をついて閉じ込めるようにしたシド王子が、真剣な目でじっと見つめる。
青い瞳が綺麗だと思った。
「俺が、自分のこと大事にしろってさっき言ったばかりだから、今なら何を言っても手を出されないって考えてる?」
「そういうわけじゃ……」
「言っておくけど、俺は自分がクレアを大事にできるのがわかってるから、そんなこと言われて遠慮はしない」
見たこともないくらい、真面目で男らしい瞳を怖いとは思わなかった。
だって、私も知ってる。
シド王子が私を大事にしてくれることを……この身で、とっくに知ってる。
「遠慮なんか、いりませ――」
縮まった距離に、もう言葉にはならなかった。