王太子殿下は囚われ姫を愛したくてたまらない
「おまえ、王子だったんだってな」
「王子ってわかっててその発言か……。なかなか度胸があるな」と苦笑いを浮かべたシド王子が「そういえば」と思い出したように続ける。
「昨日、暴動を起こしていた大人たちにひとりで立ち向かってたらしいな。クレアを庇おうとしてくれたことには礼を言う」
「おまえに言われることじゃねーよ。それに……結局、俺が守られて、クレアを守れなかった」
悔しそうに言うマイケルを、ぎゅうっと抱き締めたい衝動に駆られる。
初めて感じるたまらない感情に、これは母性本能だろうか……と思いながら、マイケルの手をとった。
「そんなことない。ありがとう、マイケル」
小さな手を両手で握りしめると、マイケルは最初不貞腐れたような顔をしていたけれど……そのうちに私に向き合い、真っ直ぐな目で見つめてくる。
「クレア。俺は昨日のことをたぶん、一生後悔する。でも、もう二度とあんな目には遭わせないし、俺が守るから。早くデカく成長して、今まで救ってくれたぶん、今度は俺がクレアを助けたい。だから、俺の妻になって欲し……んむっ」
「言わせるわけないだろ」
いつの間にかマイケルの後ろに立っていたシド王子が、マイケルの口を塞ぐ。
そして、押さえられた手を必死にはがそうとするマイケルを見下ろしながら、「最近のガキはませすぎだろ」と困ったように言った。
「マイケル、塔で見てたときからクレアのこと、いい女だなーと思ってたんだと。昨日の夜寝る前に言ってた」
明るく笑うガイルに、シド王子が「へぇ……」とあまり明るくない笑みを浮かべる。