王太子殿下は囚われ姫を愛したくてたまらない


「あ? おまえ、なんでもうクレアの部屋にいるんだよ!」

シド王子の計らいで、今日の朝食はこの部屋でみんなでとることになった。

あとから聞いた話だと昨日ガイルは相当パニックになっていたらしい。

私を探そうと、止めに入る衛兵を何人も殴って怪我を負わせたと聞き、申し訳なさでいっぱいになった。

あの時の決断を今でも間違っているとは思わない。
でも……こうして、心配してくれたって話を聞くと、罪悪感に襲われてしまう。

そんなに心配をして怒っていたのに、朝、私の部屋を訪れたガイルはいつも通りの笑顔を向けて「おう。クレア」と声をかけてくれて……その器の大きさに救われる。

いつも通りのガイルに対して、部屋に入って来るなり怒りを露わにしたのはマイケルだった。

昨日はガイルの部屋に泊まったらしい。

「さぁ。なんでだろう。……まぁ、子どもにはまだ難しい理由かな」

余裕を滲ませた笑みで言うシド王子に、マイケルは、ふん、と鼻を鳴らす。

「そんな挑発には乗らねーよ。どうせおまえなんかクレアに相手にもされてないくせに」
「……へぇ。だったら教えようか。数時間前まで俺とクレアがここで何を――」
「シド王子。お言葉が過ぎますし、その上とても大人げないです。控えて下さい」

私が止めるよりも先に言葉を挟んだのは、ジュリアさんだ。

朝食の乗ったワゴンを部屋に運び入れながら厳しい眼差しを向けるジュリアさんに、シド王子は「はいはい」とため息をもらす。

席につくよう言われ、いつも通りの椅子に座るとシド王子が珍しく隣の椅子を引く。

丸いテーブルだし、どこに座っても構わないのだけど……いつもだったら向かいの席に座るのにと不思議に思っていると、マイケルが逆隣の椅子に座った。

そして、シド王子をじとっとした目で見る。



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