久遠の絆
はっきりと覚醒したとき、蘭が最初に見たものは、無機質な金属の天井だった。


(病院?ああ、そうだ。きっと保護されたわたしは、検査のために入院させられているんだ。)


蘭は、いまだぼんやりとしている頭で、そう思った。


でも、それにしては、ゴーゴーとうるさい音がする。


(高速道路に近いのかな?)


そう思ってみる。


けれど、何か変だった。


ゆっくり頭を左右に動かしてみた。


どこまでも、無機質な景色。


飾り一つ、見当たらない。


(ここは、どこ?)


事故にあって病院に来ているなら、どうして両親すらいないんだろう?


不安に苛まれた蘭は、急いで起き上がった。


その時だった。


『お目覚めになりましたか?ただいまそちらに参ります』


というアナウンスが、突然流れたのだ。


焦って見回すと、天井の隅のほうにスピーカーと、監視カメラのような物があった。


(ずっと、見られてた?)


寝顔を?


恥ずかしくなって、布団を頭の上まで引き被った。



「ここはどこなの?」


不安がポツリと口から出た。


彼女がそう呟いた時、シャーと静かな音がして部屋の入り口の自動ドアが開いた。


布団の中で身を固くした。


近づいてくる足音。


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