久遠の絆
前線が動いた。


ある時をきっかけに、まるでその時を待っていたかのように、海上にある同盟軍の艦隊が前進を開始したのだ。





「なんでこのタイミングなんだよ~!」


熊の咆哮が艦内に響き渡り、それをまともに受けた管制室のオペレーター達は肩をびく
つかせて怯えたように身を小さくさせている。


熊の苛立ちが極まっての、この戦闘再開。


そりゃもう長い付き合い、怒鳴り散らされるくらいは覚悟の上だ。


聞いていれば、本当に熊の雄叫びのように聞こえてくるから余計怖い。


「ええい、こっちも前進じゃいっ!」


そのひと言で、帝国軍艦隊も動き始めた。


しかしこちらは敵方に比べてじわじわとした動きだ。


相手の出方を見ながら、といった所だろう。


そして丁度中間地点でぶつかり合った。


それと同時に起こった砲火の応酬。


「しっかり持ち応えろよっ!」


ここを突破されれば、あとは首都までまっしぐらだ。


「右翼から回り込んで、敵の側面を叩け!」


自軍の動きをレーダーで追いながら、熊は的確な指示を出していく。


存外良い仕事をする熊だった。


けれどそうやって集中している裏で、あることがふとした時に頭に浮かんでくる。


それは、かつては部下であり、今は敵の総大将である男のことだった。


「シドよ。どこにいる?」


いるなら隠れてないで、出て来いってんだ、フン!


喧嘩吹っ掛けたんなら、ちゃんと先頭に立っとけってんだ。


鼻息荒い上官を、ちらりと肩越しで見やったひとりの兵士がいた。

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