久遠の絆
「ご気分はいかがですか?」


我に返った。


枕元で掛けられた声は、思いの外優しい声だった。


(お医者さんかなあ)と思いながら恐る恐る顔を出してみると。


そこに立っていたのはーーー。


「えっ?!」


思わず驚きを声に出していた。


「なんで、外国人?いや、それよりも……」


そうそこには、彼女が今まで見たこともないくらいの、いや、地球上ではもはやありえ
ないくらいの美貌の青年がいたのだ。


ばっちり視線の合ってしまった、透き通るような薄緑色の瞳。

愁いを帯びて揺らぐその瞳に、蘭はすぐに虜になった。

ちょっとでも触れたら壊れてしまいそうなほどすっきりと整った鼻梁。

まるで、ギリシャ彫刻のような美しさ。

そして何よりも印象的だったのが、ゆるやかなカーブを描いて肩まで流れる黄金の髪だった。


(お医者さんじゃない?!)


蘭はそう確信した。


しかしそれにしても、いったい何がどうなってこういう状況になってしまったのか。


蘭の頭の中は混乱を極めた。


「痛みはいかがですか?」


そう聞かれて初めて、蘭の意識は自分の体の方に向いたのだ。


そう言えば。


「お尻がいたい、な」


言った途端、顔が赤くなる。


こんな綺麗な人の前でお尻なんて。


「私の部下の車と接触されそうになり、お倒れになったのです。その時の打撲によるものでしょう」


「……そっか……」


あの黒塗りの車にぶつかりそうになった時感じた鈍痛は、自分が倒れこんだ時に臀部をアスファルトに打ちつけた痛みだったんだ。

< 18 / 810 >

この作品をシェア

pagetop