久遠の絆
(これはしばらく痛みそうだな)


ひどい青あざができるだろう。


「お気を失われておりましたが、精密検査をさせて頂きました。出血や骨折は見られま
せんし、脳波にも異状はありませんでした。打撲は、今仰った臀部と、右肘に少し」


そう言われると、右肘も痛むような気がしてくる。


「上手に転んだんだね……」


自分に対し妙なところで感心してみせると、綺麗な外国人の青年はくすりと笑った。


(そんな笑顔、詐欺だよ)


射抜かれるとはこういうことを言うのだろうと、また少しずれたことを思ってしまうのは頭がまだ完全に覚醒していないせいか。


そして、その稀有の美貌を持った青年は、カイル・アルファラと名乗ったのだった。


深々と頭を下げながら、


「部下の不注意でお怪我を負わせましたことを、深くお詫び申し上げます」

と言った。


カイルという男の格好が見慣れぬものであるということに、蘭はその時初めて気付いた。


彼はマントを羽織り、まるで西洋のお伽話に出てくる騎士のような格好をしていたのだ。


(そんなコスプレ、ありえないし)


けれど、よく似合っている。


いや、この衣装しか彼にはもはや考えられないとさえ思えてしまう。


カイルと名乗ったその人は、蘭が座っているベッドの傍らに近寄ってきた。


そして次に彼の取った行動に、蘭は唖然とした。


彼は右腕を胸の前に当てると、優雅な所作で跪き、頭(こうべ)を垂れたのだ。


それは本当に中世の騎士が姫に対して取る礼と同じで。


蘭はおろおろするばかりだった。


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