久遠の絆
スクリーンに映し出される戦闘の様子を、ニアスは眉間に皺を寄せながら見つめていた。


「坊主は現場は初めてだったな」


「坊主って呼ばないでください」


ふいに掛けられた言葉に、ニアスは憮然として答えた。


一応自分としては子供時代は終わったと思っているから、それが親しみを込めたものであっても、居並ぶオペレーターの前でそのように呼んで欲しくはなかった。


しかし熊は一向に気にした様子もなく、カッカッカと笑いながら、


「これが戦(イクサ)ってもんだ」

と言って、自分よりもずっと年下の見習い兵の背中を平手打ちしたのだ。


あまりの衝撃に息が詰まり、うずくまるニアス。


(どんだけ馬鹿力なんすかっ!?)


「おう、すまねえ。ちっと力が入りすぎたか?にしてもほっそい体だな~。もう少し鍛えなきゃ、現場じゃ使えねえぞ」

とあまりすまなさそうでもなく、追い討ちをかけるように痛いところをついてきた。


「……鍛えても、身に付かないんですよ」


「なんだあ、そりゃいけねえ。筋肉が細いのか?一度医療部で検査受けるかな?それか手っ取り早いのは、『プロテイン』!」


「プロ……テイン……」


まるで企業の回し者のように力こぶを作ってポーズを作っている熊。


どこから見ても熊。



『うちのプロテインは“熊”にも効きます』


みたいな。


そんな想像をしてしまって、余計にがっくりと力を落とすニアスだった。


(やっぱ、あんまり変わってないかも……)


極度の緊張を強いられる戦場において、グレン中将の明るさというのは部下にしてみればある意味救いかもしれないが、ニアスはやはりなんとなく引いてしまうのだった。


「坊主」


また表情が変わり、今度は真面目な顔だ。

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