久遠の絆
両軍の距離が限界まで近付くと、


「『アザゼル』排出」

と、グレン中将の常にない厳かな声が命じた。




小型戦闘艇『アザゼル』。


帝国が心血を注ぎ、科学の粋を凝らして造り上げた戦闘機。


正にこの世界の科学の集大成と言える代物だった。


それに乗り込むことが許されるのは、特別な訓練を経た精鋭だけだ。


ニアスもいずれはこれに乗るべく訓練を受けている身であった。


これだけ見れば帝国軍にも勝算はあるかに思えるが、しかし同盟軍の総司令官はあのシド・フォーンであり、彼は軍事における天才だった。


彼の指導の元、同盟軍も独自の戦闘艇を開発していたのだ。


帝国軍の『アザゼル』が艦船より排出されたと同時に、敵方からも黒い物体が飛び出した。


赤と黒の対比がいっそうその場を禍々しい空気に染めていく。


日の光を受けてきらりと光る機体が、ぶつからない程度の距離で交錯する。


そして放たれる空対空ミサイルーーー。


















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