久遠の絆
その街は海のすぐ側にあった。


波の穏やかな透明度の高い海で、珊瑚礁があり色とりどりの魚たちが泳ぐ。


湾を入った港には、たくさんの漁船が停泊しており、その近くにはセリが行われたり屋台が建ち並ぶ広場があって、たくさんの人で賑わっていた。


しかし、そんな広場の賑わいに水をさすかのように、空にはどんよりと雨雲が立ち込めている。


今にも雨が落ちてきそうな気配に、人々は早々に用を済ませ、家路へと向かっていた。



大きくはない街だった。


素焼きレンガの平屋がほとんどを占める。


しかし、きちんと計画を立てて造られた街のようで、石畳の道路は整然と走り、最後には中心にすべてが集まるのだ。


その中心に位置している建物は、割としつらえの良い、白亜の屋敷だった。


門扉の両脇にはその外観に似つかわしくない、重装備の警備が立ち、装甲車が停められている。


そして屋内の一室では、やはり優雅な建物には似合わない、剣呑な空気が漂っていた。





街は穏やかな空気に包まれているというのに、知らぬ間に事態は悪化の一途を辿っていたのだ。








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