久遠の絆
何故彼がそこまで自分の生まれ育った国を嫌うのか。


そのことに蘭は少なからず興味があった。


(機会があったら、訊いてみたい)

とまで思う。


けれど、そんな機会は持てそうになかった。


彼は蘭のことなど忘れてしまったかのように、一切の接触を断っていたのだから。


でも実際に会ったら、緊張と恐ろしさでそれどころではなくなるだろうとも思う。


ナイルターシャを救おうと飛び出した際に間近で見た、彼の瞳の冷ややかさが忘れられなかった。


冷酷無比と称される、そのままの彼がそこにはいたのだ。


その瞳を思い出した途端悪寒が走り、蘭はぶるっと身を震わせた。


(会わないでいるほうが、絶対いいに決まってる)


思いながら、部屋の中ほどに据えられた長椅子に腰掛けると、彼女は疲れたように身を横たえた。


(ひとりでいると、考えなくてもいいことまで考えてしまうな……)


ちらりと、白い包帯が視界に映った。


(ううん。あの時とは違うよ)


死にたいと、部屋に閉じこもって頭を抱えていた時とは違う。


(少しは前向きになれたかな、わたし……)


また潮の香りのする風がそよそよと部屋の中に吹き込んできて、カーテンをふわりと揺
らした。


凪の時間が終わったのか、少し風が出てきたらしい。


間断なく風がカーテンを揺らし始めた。


それを見ている内に、蘭はいつしかうとうとと眠りに落ちていった。














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