久遠の絆
リリカは足早に蘭に近づくと、「さあ、ランさま参りましょう」と彼女にしては優しい声音で言った。


蘭は身を硬くしたままリリカの後についていった。


ヘラルドの顔をなるべく見ないように。


また痛い思いをしないように。


素直に黙々と、部屋へと続く小道を歩いて行った。


(わたし、このままじゃ何も出来ないよ)


そうは思うが、ヘラルドの監視の目をかいくぐって何か出来るとも思えない。


結局また、蘭の歩みは止まってしまったのだった。















それから何日かは、朝餉を済ませるとナイルターシャのいる小屋へ赴き、夜老女が眠りに付くと部屋へ戻るという生活が続いた。


ナイルターシャはあえて蘭に新しいことがあったか聞くことはないけれど、蘭にはかえってそれが辛かった。


早くあの村へ返してあげたいのに、当分叶いそうもなかったからだ。


それでもナイルターシャの体調は村にいたときとほぼ変わらないくらいにまで回復しており、それが救いといえば救いだった。


「ふ~」


溜息をついてから(しまった)と思ってナイルターシャを見ると、老女は上品な笑みをたたえたまま、


「疲れているのではありませんか?」

と蘭を労わるように言った。


「いいえ、そんなことはありません」

と答えたものの、老女は頭を振った。

「いいえ、顔に出ているもの」


「顔、ですか?」


思わず頬に手を当てた。

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