久遠の絆
冷たいものが顔に当たり、その刺激で蘭は目覚めた。


(暖かい)


第一に思ったのがそれだった。


かじかんでいた手足が嘘のように温もっていた。


「ありゃ、起こしちまったか。悪かったな」


野太い声に、完全に目が覚めた。


飛び起きようとすると、

「ちょい待ち。嬢ちゃん、凍傷の一歩手前だったんだ。まだ休んでなきゃ、ダメだぜ」


肩を押さられて、また横にされた。


ようやくしっかりと声の主を見ると、見たこともないくらい綺麗な青色の瞳をしたおじさんだった。


顔は一面髭で覆われていて、その瞳と随分不釣り合いに思えた。


蘭があんまり顔をじっと見るので照れたのか、おじさんは顔を赤らめながら早口で言った。


「いやあ、嬢ちゃんにはほんまに悪いことしたわ。うちの猟犬、勢いよう走り出したから、こりゃ久々の獲物じゃいうて喜んで後を追ったら、あいつ、嬢ちゃんに飛び掛かっとるんじゃもの。焦ったよ。噛み付く寸前で止めたけ、怪我がなかったから良かったけど、でも嬢ちゃんには悪いことしたよなあ。すまんかった」


そう言って、おじさんは頭を下げた。


そうか。


ライオンのように大きな犬。


あれは猟犬だったのだ。


(捨てる神あれば、拾う神ありって、このことなのかな)


つまり、自分はまだしねない、ということか。


(まだ、辛い思いをしなきゃいけないのかな……)


いっそのこと、あのまま一思いに殺してくれていたら良かったのに。


そんなことまで思った。


「嬢ちゃん……泣いてんのかい?」


「え?」


おじさんに言われるまで気付かなかったが、蘭は泣いていた。


生きていられて嬉しいのか。


死ねなくて悲しいのか。


(これは悲しいから泣いてるのよ)


どうしてもネガティブにしか考えられなくなっていた。


涙を流す蘭におじさんは、「これで拭け」と布を差し出したり、「あったかいの飲んで、気持ち落ち着けろ」とカップを差し出したり気を遣ってくれている。


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