久遠の絆
南部沿岸域の前線の様子は、随時報告がもたらされる。


芳しくは、なかった。


ガルーダは帝国の元軍人によって創られた国だった。


そのため帝国の内情、特に軍事面の機密にも精通している。


帝国を根底から揺るがす恐ろしい存在だった。


なぜ、軍人たちは帝国を出たのか。


今もって詳しいことはわかっていない。


現皇帝の治世に反発して、というのが一般的な見方だが、しかしそれだけでは説明が足りないのだ。


ここ数年ダンドラークの中枢は非常に頭の痛い思いをしていた。


ジュラークⅠ世は執務室に一人、報告書に目を通していた。


文を追うごとに表情が険しくなっていく。


そして深い溜息と共に、その報告書を放り出した。


「なんとしたものか……」


憂いの濃い声。


その憂いと苦悩のために、実年齢よりも老成して見えるジュラークⅠ世。


長らく続いた平和があった。


それを自分の代で壊された。


望んで始めた戦いではない。


しかし、この国のために、民のために、戦うことを決意しなくてはならなかったのだ。


彼が十代の終わりに即位してすぐのことだった。


軍でも精鋭として名高かった部隊。


その一個小隊が、ある夜突然姿を消した。


当初その事実は政治の中枢の僅かな者にしか知らされず、当然武器弾薬が持ち出されたことも最高機密として伏された。


その二年後、ガルーダの建国宣言がなされる。


元首は総統。


そして、その名を聞いたとき、国の大部分の者が驚愕した。

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