久遠の絆
「一点に集中しつつある」


「……」


シェイルナータはゆっくりと顔を上げると、涙の滲む目をヘラルドに向けた。


「許しておいて、いいのか?」


ヘラルドは嘲るように笑った。


「一つ一つを潰しても面白くないだろう?全員まとめて、世界の終焉と共に抹殺してやる」


「……」


「何だ?文句があるのか」


「いいや。私はお前さんに付いて行くって決めてるんだ。文句なんざないさ。ただ、指輪の力を甘く見ないほうがいい」


「はっ。指輪。たかが石に、何が出来るというのだ!」


「ヘラルド……」


シェイルナータは立ち上がると、心配そうに眉根を寄せた。


「甘く見ないほうがいい。石は神がお造りになった物だ」


「神!神など、取るに足らんわ」


「ヘラルド!」


「貴様は私に付いて来るのか、来ないのか」


「もちろん、付いて行くに決まってるじゃないか」


「ならば、私こそが神だと思え。宇宙の崩壊を止めることすら出来ぬ神など何するものぞ。神に力があれば、セイアとて死ななかった!」


シェイルナータは息を飲んだ。


セイア。


星愛。


それは、越えられない壁。


ヘラルドの愛を、死してなお、時を経てなお、勝ち得ている存在。


シェイルナータは唇をきゅっと噛んだ。


「私を見て」と叫びたい衝動に駆られながらもそうしないのは、彼の側にいられるだけで十分だから。


欲望の捌け口でもいい。


暴力を受けても、その時は彼の視界の中にある。


だから、これ以上は望まない。


唇に血が滲むのを気付かない振りをして、シェイルナータは自身を無理矢理満足させるのだった。


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