ホテルの“4つのクリスマスストーリー”

心の晴れないままリビングに戻り無言で座ると、ウェディングドレスに身を包んだ花嫁がまるでわたしに助け舟を出すかのようにテレビの画面に現れ、幸せいっぱい風の笑顔をつくった。

悶々としたわたしは意を決して、それとなく話題を持ち込んでみる。自分を主語にすることは避けながら、なるべく直接的な言葉を使わないように。


「そういえばこないだウチに遊びに来た子、結婚するんだって。

昔は結婚願望なんてない!って断言してたのに、決めたら早かったなー」


『へぇ。よっぽど相性の良い人に出会ったんだね』


「30までに結婚するとか突然言い出すから、驚いちゃった」


『まあやっぱり区切りの歳なんじゃないの。特に女性にとっては』


そうでしょ?と彼の視線が、年明け早々三十路を迎える予定のわたしに移る。

いきなり核心に近い話題の予感がし、それを望んでいたはずなのにどぎまぎしてしまう。


「ま、まあ色々ハッキリさせたくなったりはするよね~」


色々ハッキリさせたいくせになんだこの曖昧な答え方は、と自分にツッコミを入れながらも肝心なところで怖気づく癖のせいで、不甲斐ないけど今日のところはこれが精一杯だ。


『ふ~ん・・・』


これといった感情も見えない、主体性のない彼の相槌でこの話題はあっけなく終了した。


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