100回の好きの行方
 篤人もつられて赤くなりながら答え、信号が青になったため慌てて車を発進させた。

 思わず触れてしまった篤人の手と、ふいに触れられた麻嘉の髪が、熱を持ったように熱かった。

「食べにくいなら、髪結んだらいいのに。」

「んっ、そうだよね……。そうしたいんたけど……。」

「………?」

 なにやら煮え切らない態度だと篤人は思ったが、ネイルしてるからだろうかと考え、あまり深くは追求しなかった。

 その事を後で、深く悔やむことになるとは思わなかった。

「明日、帰りにさ海鮮丼食べて帰らない?麻嘉、好きだろ?」

「えっ!海鮮丼!!食べたい!」

「帰り、海辺まで車走らせたら、めちゃめちゃ美味しい所があるらしいから。麻嘉が予定なかったら。」

「行くっ行きたい!!」

 麻嘉は目をキラキラさせながら、運転している篤人をみた。自分の好物を知っていてくれていたことも、もちろん嬉しいが、二人でどこか行けることが何より嬉しかった。

 穴が開くくらい篤人を見つめていたためか、"見すぎだって。"と顔を赤くしながら、睨み付けてくる。

「……おにぎりの……お礼だからなっ。」

 それだけいうと、また前を見て運転を始めた。

 二人の間に流れる空気は確かにこの時は、穏やかなものだった。

 麻嘉はこの時間が止まればいいのに、とさえ思っていたのだ。
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