100回の好きの行方
「ちょっとっ……私の部屋のカギ返してよっ。」

 未だに不機嫌で、麻嘉の部屋のカギを返そうとしないため、ちょっときつく訴えるがそれも虚しく、篤人の部屋に強引に引きずり込まれる。

「えっ!?なっ?……ちょっとっ!?」

 引きずり込まれた意味が分からず、驚いた声を出す麻嘉を部屋に入った瞬間、急に振り向き、ドアに押し付けれる形で、篤人に見下ろされた。

 一瞬、麻嘉はこの状況が脳内でリピートされた。

 あのファーストキスを奪われた時も、こんな感じだったと。

 そんな風に考えていると、篤人の息が近くに感じた。

 先程までは、篤人に両手で壁どんされる形だったはずが、両肘を壁につけているため篤人との距離は、動けば唇が触れるほど、近づいていたのだ。

「!!!!」

 少しでも動いたら唇が触れそうで、びっくりして息を飲むことしか出来ない。

 それが篤人にも分かっているようで、しばらくの間はそのままの状態が続いた。

 その状態に慣れて肩の力を麻嘉が抜くと、それを察知し、さらに追い討ちをかけるように、足と足の間に篤人の足が割り込んで来たのだ。

「っ!!!」

 さらに驚いていると、"なぁ……誘ってんの?"と耳元で呟かれ、麻嘉は、"んっ…。"と甘い声を出してしまった。
 
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