100回の好きの行方
 甘い声を出してしまってから、心臓の音がバクバクとする。

 これから起こりうる出来事に期待してる自分の気持ちが、相手にばれないだろうか必死で目をそらし、全然違うことを考えようとするが、思い出すのは、あの台風の日の出来事ばかり。

「おい……。」

 耳元で囁く篤人の声にまた、反応してしまいそうになるが、そこをこらえ、篤人の呼び掛けに顔をあげずにいると、ふっと手が顎と腰に触れたのが分かった。

 その瞬間、顎をクイッと持ち上げられ驚きと同時に、唇を乱暴に塞がれた。

「!!!!」

 麻嘉は、バタバタしてどうにか逃れようとするが、逃がさないように腰に触れている手に力が入り、ぎゅっとさらに距離を縮める。それと同時に、唇をこじ開けて、篤人の舌が入ってきた。

「んっ!!んっ………。」

 急に優しく濃厚なキスに変わり、麻嘉は力が抜けていき、今まで宙ぶらりんだった両手を、おもわず篤人の肩にまわした。

 必死にキスに答えて、篤人の唇が離れた時は、ぐったりし、立っているのがやっとだった。

 もう何がなんだか分からない。

 篤人が披露宴から不機嫌な理由も、部屋に連れてきてキスした理由も。

 知りたいような、知りたくないような。

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