100回の好きの行方
「課長。」

「これ、人事部と総務部に差し入れ。俺の分は麻嘉ちゃんにあげるよ。」

「いつも差し入れ、ありがとうございます!みんなで食べますね!」

「麻嘉ちゃんにだけ、本当はしたいんだけどね。」

「……気持ちだけ、いただいときます。」

 困惑しながら笑顔で答える麻嘉の態度から、課長のアピールに気がついてるのが分かった。

 課長は、俺たちがいるにも関わらず、わざと見せつけるように差し入れを渡しながら麻嘉の手を握り、"麻嘉ちゃんには、また、特別に差し入れ持ってくるね"と耳打ちして人事部の方に歩いていった。

 麻嘉は気まずそうに、俺達3人に挨拶し、差し入れを持って小走りに総務部がある方に向かった。

 その様子を一部始終見ていた俺は、イライラするのをひたすら隠し、尚志と享に気がつかれないように呼吸を整えた。

「あの課長、結構前から麻嘉狙ってたからな。グイグイ押してるんじゃない?」

「えっそうなんですか?」

「わりと有名な話。それに今は麻生が頑張ってるよ。」

「あっやっぱり、麻生、麻嘉さんのこと本気でしたか。」

 二人のやり取りを聞いて、課長のことは気がついていたが、宗治のことを聞き、さらにムカムカする自分が嫌になった。
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