100回の好きの行方
 ラブマルシェは、恋人たちの聖地といわれており、ラグジュアリーなホテルもあり、ショッピングモール等のデートスポットもたくさんあるが、そこに女性同時で行ったりましては一人で行ったりする人は、限りなく少ない。

 だがら、ラブマルシェにいたと聞いて、篤人はカッとしてしまう。

 自分から同僚と線引きし、遠ざけたのに。

 それから、程なくしか経ってないのに、他の男といるなんて。やっと自分の気持ちが分かったのに。

 そう考えていたら、プチっとなにかが切れた。

 気がついたら、麻嘉の制服の二番目のボタンを外し、見えなさそうで見えそうな場所を唇が吸い上げていた。

 一瞬の出来事で下を向いていた麻嘉は、ボタンに手を掛けられた時、息を飲んでしまい、チクリと痛む痛みに、悩ましげな声を軽くあげてしまう。

 篤人の唇が離れ、その場所には赤い花がくっきりとついていた。

「なっ何で…こんなこと。」

 思わず顔をあげてしまった麻嘉は、未だにこの状況が理解できない。

 ただ、目の前には何も言わずに不機嫌な顔をした篤人がいるだけ。

「篤人だよ……。同僚が良いって言ったのわ!?何でこんなことするのよ!!」

「……。」

 涙を目にたくさん浮かべ、歯を食い縛るようにしている麻嘉は、軽く篤人を叩き、"もう、同僚になんて戻れないよ。"と言いながら、非常口を出ていった。

 篤人はそれを追いかけることが出来ず、非常口の扉に背中を押しあて、項垂れながら呟いた。

「こんなはずじゃなかったのに……。」

 非常口はやけにシーンとしており、篤人の言葉が木霊したように感じたのだった。
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