100回の好きの行方
ー意地っ張りな気持ちと素直な想いーの行方
『麻嘉、話がある。今日、時間を作ってくれ。』

 兄と共に帰ろうとした時、追いかけてきた篤人に呼び止められ言われた言葉だ。

 本当なら今からでも話が聞きたい。

 でも、今、聞いたらいけないような気もする。

 それ以前にこれから用事もあるため、麻嘉は提案をした。

『夜なら……。会社近くのファミレスで。後は、連絡取り合おう。』

 いつもより固い話し方になるのは、まだ、麻嘉の中から気まずさが抜けないからだ。

 麻嘉はそれだけ話すと、着物の裾を翻し、兄とともにエレベーターへと急いだ。

「今のだろ?」

「えっ?」

「お前の好きなやつだろ?」

「………。」

 麻嘉は何も答えることはせずに嘉也を見て、曖昧に微笑んだ。

「いいのかよ。今日、お見合いなんてして。」

「いいんだ。もう気持ちはお見合いに向いてるし。」

「……はぁ。そうかよ。」

 何も言うまいと思い、嘉也は次に言おうとした言葉を飲み込んだ。

(たぶん、彼の気持ちは麻嘉に向いてるのに。恋ってタイミングだよな……。)

 麻嘉が有給で着物を着ている理由は、"お見合い"をすりからだ。

 先方はすごく乗り気だが、それでも、上手くはいかないと嘉也は思っている。
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