100回の好きの行方
「来月から二人来る。一人は新入社員だが光るものを感じて、俺が押した。もう一人は、支店の販売員で君たちと一応同期になるかな?社長からの推薦だ。」

 二人の履歴書を見せられる。

 一人は男性、もう一人は女性。

 6月の梅雨に入りそうな時期に、会社内の人事異動があるのが、うちの会社特徴とも言える。

 4月に入社し、2ヶ月の研修を受け、配置が決定するのだが、今の時点で人事が分かるのは珍しかった。

 また、デザイン部に人が入ることも、とても珍しく、麻嘉以来の採用で、新ブランドへの期待が高いことを物語っていた。

「朝霧が辞めるなんて言えないから、引っ張って来るの大変でさ。しかも、俺は新人が良いけど、社長はこっちの女性を押すしで……まっ結果、二人とも何だけどさ。」

 佐伯は、"新ブランドも、朝霧に任せたかったな。"と、ぼぞりと呟き、麻嘉を上から下から眺めた。

「今日からは、女子力高めにするんじゃなかったのか?」

 麻嘉は今日も紺色のシフォンブラウスにチノパンという、篤斗に言われた制服みたいな格好に、ナチュラルメイクであった。

「急にはちょっと無理なので、出来ることから…って、思って、お弁当作って来たんです!」
 
「へぇ~。」

「それに、ぺたんこ靴から3センチヒールにしてみました。」

「健気だね~。」

 足元のヒールを自慢気に見せる麻嘉に、優しい眼差しを向ける佐伯だった。
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