100回の好きの行方
「深山、藤尾に分からないことがあれば聞いてくれ。」

 "わかりました"と頷く菜月だが、何だか浮かない顔をしている。不思議に思っていると、菜月が佐伯に話しかける。

「あの、課長。私、朝霧さんの案件したいです。」

「はぁっ!?」

 菜月のいきなりの訴えに、尚志があからさまに怪訝な顔をし、声をだす。

「フラワーシリーズをえらく気に入っているクライアントだし、向こうの指名だから、それは無理だな。」

 菜月の申し出を、はっきり断る佐伯も呆れ顔である。

「これは朝霧さんのためなんですよ?篤斗にフラれて、一緒に仕事するのも嫌なはずだし、私のデザインは、私のこと一番よく分かってる篤斗に営業して欲しいですもん!」

「指命のものを別の人にお願いするときは、こちらで判断した時だけだ。」

「でも、フラワーシリーズを気に入ってるからって、私がデザインしても朝霧さんがデザインしても、大差ないと思うんですけど……。だって朝霧さんが目の前でデザインするわけじゃないでしょ?」

 この台詞に、その場のみんなが唖然とする。新人の二人もびっくりしたような顔で菜月を見ている。

 佐伯が口を開こうとするが、その声を篤斗が遮った。
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