100回の好きの行方
 麻嘉と直接言われたわけじゃない尚志は、"はぁっ?"と口を開けたままあ然とした。

「篤斗があなたを名前で呼ぶのも本当は嫌なの…。でも、もっと嫌なのよ、あなたが篤斗って呼ぶの。しかも、旅行だなんて。」

 何も答えられずにいると、佐伯と篤斗が会議を終えて戻ってきて、召集をかけた。
 
 一旦その話を保留にするように、麻嘉と菜月は席をたち、佐伯のデスク付近に集まる。そのときも、菜月は篤斗の横を陣取り、会社の中にも関わらず篤斗に寄りかかろうとしていたが、それは、篤斗が拒否している姿が見られた。

「クライアントからコラボ商品の話がきた。3件中、2件は朝霧を指名だ。あと1件はアクセサリーデザインだ。藤尾が今抱えてる案件が多いから、深山やってみようか。」

 そう言いながら、それぞれに資料を渡す。

 配属されてから宗治に比べ野心家な菜月は、デザインをやりたがっていた。だからこその佐伯の判断だった。

「麻生は朝霧に勉強させてもらえ?しっかり吸収出来ることはしてくれよ!」

 そう言われた宗治は、麻嘉に軽く頭を下げた。

「真壁は、真中と一緒に組んで、この軽快なトーク術を学んでくれよ!まなかべコンビ!」

 佐伯は、二人の事をセットにするときはこう呼んでいた。
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