100回の好きの行方
「なぁ、その女が好きなのか?」

「仕事に対する姿勢に惚れたと言うか、助けられたんだ。」

 尚志は、それに対して確信した。篤斗が言う女性は、菜月じゃないと。菜月の、仕事に責任を持たない発言は今日始まったことじゃない。篤斗がいないときは、特に酷い。宗治にアシスタント業務を任せたり、机でネイルしていたり、あかねに注意を受けることが多かったからだ。

「半年って言わずすぐに別れたら?篤斗には関係ないわけだし、ストーカーはさ。」

「引き受けたからには……クリスマスまでは付き合うよ。」

「深山は、篤斗のこと好きだと思う……じゃないと、麻嘉に嘘言わないだろ。それ以前に、二人をみてる麻嘉の気持ちが可哀想だよ。名前は呼ぶな、同期の旅行はやめてくれとか言われて。」

 菜月が麻嘉にいってる嘘を始めて聞く篤斗は、驚愕してクリスマスまでの彼氏代行はやめようと心に決意するが、二人が思うより菜月が強かなことには、まだ、気が付かなかった。

「深山のことは分かった。話してくれて良かった。」

 二人のわだかまりも解消し、その後は、二人でビール片手にいつもの感じで、飲み始める。

「……なぁ。麻嘉になんでキスしたんだよ?」

「……分かんない。したかったから、かな……。」

 尚志はあえて何も返さなかったが、ほんのり顔が赤くなっているように感じ、クスッて笑ってしまい、麻嘉と篤斗の気持ちが同じになるといいなと心の中で呟いた。
 
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