サンタクロースは君だった
「…後悔ゆえに、だよ。」
「後悔…。後悔があるんだ。」
「うん。だから、この先は後悔しないようにって思って頑張って口にしてるの。」
「…それがすごいんだよ、レオくんは。」
「そうかなぁ。」
「うん、そうだよ。私なんて後悔もいっぱい、言えないこともいっぱいだもん。変えたいって思って変えれるのってすごい。」
「…ありがと。でも、ひかりちゃんだって変わってきたと思うよ、僕。」
「え?」

 レオの手が、ひかりの髪に触れた。

「12月に出会った時はショートだったけど、あれから3ヶ月で伸びたよね。すごーくってわけじゃないけど、時々毛先がくりんと跳ねたりしてる。」
「え!?そうなの!?」
「うん。慌てて来たんだろうなーって時。」
「は、恥ずかしい!」
「あはは。ごめんね、言わない方が良かった?」
「…言ってくれて良かった。気をつけれるから。」
「そんなに気を張らなくて大丈夫だよ。ちょっと気の抜けたひかりちゃんも可愛いから。」

 にっこり笑うレオの顔を見ていると、笑うのが得意じゃないなんて嘘みたいだ。

「いっぱい笑ってくれるようになったし、僕に対して敬語も取れた。ね?ひかりちゃんも変わってきてるよ?」

 そう指摘されて初めて気付ける。確かに最初に出会った時は、彼は『レオくん』というよりは『冬木レオン』だった。芸能人、自分の好きなアーティスト、自分とは違う世界を生きる人。しかし今は、『冬木レオン』ではあるものの、『レオ』そのものと接している気持ちが強い。鼻歌はプロ級(鼻歌にしておくにはもったいないレベル)ではあるし、レオが奏でていたと思った曲がCMに起用されたり、有名な歌手が歌っていたりすることもあり、いわゆる一般の人とは違うと思うところもあるにはある。それでも目の前の『レオくん』は、ひかりと真っ直ぐに向かい合って視線を合わせてくれる大切な人だ。

「…そっか。そういう風に考えることもできるんだね。」
「うん。さて、ちょっと片付いたし、僕がコーヒーを淹れてあげます!」
「ありがとう!レオくんが淹れてくれるコーヒー、美味しくて好き。」

 さらりと口にした『好き』の二文字に気付いて、耳が熱くなった。どうやら『好き』の文字だけではないものも含めると勢いで言えてしまうらしい。
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