サンタクロースは君だった
「…自分で、頑張らせて…ほしい。」

 たくさん想いを伝えてくれるレオに、これ以上甘えることはできない。甘えたくない。

「…そっか。でも無理しちゃだめだからね。熱とか風邪とかそういうのも嫌。」
「わかった。…ちゃんと気をつけます。」
「うん。そうしてね。あ、こっちの荷物、ひかりちゃんの部屋に運んじゃうね。」
「ありがとう。」

 素直に出てくる『ありがとう』の言葉。その一方で、喉につかえたように出てこない『好きだよ』の気持ち。同じくらいの気持ちはあるのに、こうも出てこないとなると出すための勇気がとても必要だ。

「ひかりちゃーん!明日はお仕事だよね?」
「うん。4月から副店長が新しくつくことになったから、その子の指導ってことで急遽出勤。」
「…待って。その子って、ひかりちゃんより年下の人が来るの?」
「あれ?言ってなかったっけ。年下というか、新入社員?とにかく若い男の子だったと思うよ。履歴書とか書類一式、明日の朝行ってから目を通そうかと…。」
「年下の若い男…?…羨ましすぎ…。」
「えぇ?」

 思わぬ展開に大きな声が出た。

「だってひかりちゃんに手取り足取り教えてもらえるんでしょ?いいなー僕も教えてもらいたい。」
「レオくんに教えることなんてないもん!書店員の仕事なんて本を出したりポップを作ったりだよ?レオくんみたいに、無から有を生み出す仕事じゃないから…。」
「えー…僕、接客とか絶対無理だよ。実弥と違って笑うの得意じゃないし。」
「わ、笑ってるよねレオくん!いつも笑ってるよ?」
「それはひかりちゃんの傍にいるからだよ。ひかりちゃんの傍にいたら笑顔になっちゃう。っていうか緩んじゃう。」

 レオみたいに素直に色んな事が言えたら、どんなに後悔がないのだろうと思う。よくよく人生を振り返ってみると後悔ばかりだ。言いたいことが言えた例なんてほとんどない。

「…レオくんはいいなぁ。」
「え?なんで?」
「素直で、真っ直ぐで。きちんと言葉にできるから。」

 人はないものねだりだとよく言われるけれど、本当にそうだと思う。自分とは違うものが光る人に魅力を感じずにはいられない。
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