サンタクロースは君だった
『今、冬木レオンさんからお電話が入っております。繋ぎましょう。冬木さん?』
『はい。…今回はお騒がせしてしまって申し訳ありません。冬木です。』

「レオくんだ!」
「生きてたね、とりあえず。」
「うん!」

 久々に聞くレオの声に、ひかりは安堵した。少し元気がないような気がしたが、今はひとまず置いておくことにする。

『6月3日のこの番組の放送時間をいただいて、僕が直接お話できることになりました。僕のこんな我儘をきいてくださったスタッフの方には感謝しております。週刊誌の内容につきまして、本来であれば記者会見でも行えばいいのでしょうが…。今回は局長さんに大変感謝しています。ありがとうございます。全て僕が話しますので、どうか僕の言葉を待っていただけないでしょうか。今回の記事に関しましては、真実のものもあればそうではないものも多数含まれています。本当のことを話します。どうか、よろしくお願いします。』
『それは、この番組独占取材ということでいいんですか。』
『はい。そんな大げさなものではありませんが、話せる機会を作っていただきました。ありがとうございます。』
『視聴者の皆様、6月3日のこの時間は独占取材です。』
『この場をお借りしてお願いがあります。差し出がましいことは承知の上でお話いたしますと、今回記事にあがっている女性は普通の生活をしている方です。僕のことはどれだけ詮索していただいても構いませんが、彼女のことはそっとしておいてほしいです。芸能人であったという立場上、イメージを売る職業としてプライベートが軽視されてしまうことはわかっています。ですが、彼女は芸能人ではありません。写真のマンションへの張り込みなどは近隣にも迷惑が掛かりますので、やめていただければと思います。必要があれば、6月3日以降にそれぞれ僕がお話に行くことも可能です。どうぞよろしくお願いします。』

「…ひかりのこと、心配してる。それしか、よくわかんない。」
「…そう…だね…。」

 同じくらい、ひかりもレオのことを心配していた。声が聴きたかった。こんな声じゃなくて、いつもみたいに明るく笑う声が。
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